新ネットワーク思考

ソーシャルネットワーキングの問題をちゃんと考えるために、アルバート・ラズロ・バラバシの「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く」を読んだ。ついでに、"Statistical mechanics of complex networks"(REVIEWS OF MODERN PHYSICS, VOLUME 74, JANUARY 2002)も読んでいる。こっちは数式が多いので、ゆっくりと。

結論からいうと、バラバシっていうのは井庭ちゃんとホップフィールドを足したようなやつだと思う。文章がやたらうまい。話によると、学生時代からサイエンスライターをやっていたらしい。ホップフィールドは、ご存知のとおり、統計力学スピングラスのモデルをニューラルネットワークにもってきたひとだが、バラバシも統計力学のモデルをインターネットのリンク分析にもってきたわけだ。

バラバシの論文を研究室で読んでいると、後ろから池上さんが、「そんな下らん論文読むな~」とかいってけりを入れてくる。やっぱり池上さんは嫌いらしいし、イギリスかどこかの学会でもバラバシはあきれられていたらしい。そりゃそーだ。モデルとしては大したモデルじゃないし、複雑系としての新規性がそれほどあるとは思えない。

でも、ぼくが偉いと思うのは、実際のインターネット構造をボットを使って調べて実証家としてのところ。理論家としてはスケールが小さいわな。間違ったことは言っていないけど驚きのポイントがずれてるし。

要するに、この本に書いてあるようなことは、20年前レベルのパラダイムだし、インターネットとベキ法則なんて話も、ぼくらのまわりでは10年前からいわれていたことだ。

むしろ驚くべきことは、この本を読んで、研究のモチベーションが高まってしまう公文さんのような人がいることだ。つまり、長年情報社会だなんだかんだと言っている人のほとんどは、この程度の概念世界も知らずに言ってたんだなあと思う。この程度で感動しているので、やっぱりこれ以上にはいけないんだろう。

それはともかく、ワッツのクラスタ係数とか、ネットワーク理論のいくつかの統計指標や方法は、ソーシャルネットワークサイトを運営する上で必須のはずだ。ソーシャルネットワークサイトはこれからは統計物理学者とコラボしないといけないようになるが、日本のソーシャルネットワーク運営者はそんなこと考えているんだろうか。アメリカではもう始まっているだろうな。ここの違いは、たとえるならば、要するにラリー・ページがいる検索エンジンgoogle)とそれ以外という違いに結びついていくだろう。

この本のP47によれば、ミルグラム自身は一度もSix degrees of Separationsという言葉を使わず、劇作家のジョン・グエアが1991年に書いた作品のタイトルなのだそうだ。greeには、そんなこともあずかりしらず書いてあるが、いいのだろうか。