生産プロセスの可視化というオープンソースの本質

記念すべき100エントリー目。

あらかじめ断っておくが、オープンソースについての話はほとんど出てこない。京セラのアメーバ経営についての話の続きだ。

CNETの江島さんのblogの最新のエントリで、K社(おそらく京セラ)のYさんという人の"visibility"(可視化)についての話がでてくる。

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キーワードは「ビジビリティ(Visibility)」。人は見られていると、キレイでいようとする。例えば、在庫がいつでも誰からでも見えるようになれば、現場に緊張感が生まれて在庫がだぶつかなくなる。だからITでビジネスを可視化するんです。

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江島さんがY氏に会う前日に、実は江島さんと飲んでいて、PICSYについてとかITベンダーとユーザの関係とかについて話していたので、共時性を感じざるを得ない。

visibilityを重要視する視点は、珍しくはないが、Y氏の着眼点には特徴がふたつある。ひとつは、よく言われるvisibilityは見るほうの立場に立脚しているのに対して、Y氏は見られるほうの立場から自主的に改善される点を重視している。ふたつめは、visibilityが大事だねというレベルではなく、企業がITを導入する目的がvisibilityであると言い切っている点だ。京セラの経営思想からして、visibilityが経営の目標であるということさえ想像に難くない。京セラのアメーバ経営では、少人数のグループ単位で、財務諸表をつくるという管理会計を導入しているからだ。

CISEと呼ばれるPICSY人事評価システムの実装や、Galapagosと呼ばれるXM(eXtreame Meeting)支援ツールの実装では、作業日報や議事録がblogに書き込まれるが、その重要な目的がvisibilityであろう。

PICSYを導入すると、このvisibilityがさらに向上する。その行為が最終的にどのように役に立ったかまで含めてvisibleになるからだ。

PICSYで生産性があがるかという未解決課題があったが、visibilityによる企業内での生産性の向上がいえれば、PICSY世界全体における生産性の向上もいえるだろう。どうも、コースの経済学における取引コストという概念に、ぼくはしばられすぎていたような気がする。

行為とその結果の対応関係がよりvisibleであるためには、PICSYより多い情報量(すなわち、すべての取引データを保存してそのB2B因果関係をトレースする)が必要である。そういう意味でRFIDとトレーサビリティまで含めた生産プロセスのオープンソース化には興味があるが、東さんが指摘しているような匿名性の確保というプライバシーの問題とは相反する方向でもある。しかし、現実の貨幣システムはほとんど匿名化されていないのであるから、匿名性はその選択肢がある程度確保されていれば、すべてが匿名的である必要がないのではないかと考えている。

JAも生産者をWEBで確認できるシステムをはじめた。この流れはしばらく続きそうだな。