歴史認識1 9.11への過大評価

歴史認識といっても、あの戦争のことを語るわけではない。

ただ、世界がどのようであるかを知ることは、世界をどのように変えられるかの前提であるから、現代がどのような「歴史」的存在であるかを、我々は常に理解するよう努めなくてはならないということだ。

・近代文明は特殊な文明であること(倫理の問題を力学の問題にすりかえること)

・アメリカによるヘゲモニーは50年は維持されるであろうこと

自由主義および民主主義にかわる力学は今のところ発見されていないであろうこと

・国家は比較的安定的な制度であり、国連は代替しないであろうこと

以上のようなことをこれから述べるつもりだが、その前に我々がいかに流されやすく、誤った認識を持ちやすいのかをテロを例にとって説明しよう。アメリカ対テロリズムという対立軸が日本の、あるいは世界のメディアの論調を支配している。しかし正直にいって、テロリズムなんぞアメリカの敵ではない。現在のイラクの混迷は単にへたくそな統治政策の問題である。

多くの人たちはすっかり忘れているようだが、アメリカは20世紀にはもっとすさまじく強大な敵と対峙していた。

例えば、ありえない話であるが、ロシアと中国が再共産化したとして、我々はそれでもテロを新世界秩序の重要な項としてみなせるだろうか。おそらく、冷戦下に起こった多くの民族紛争やテロと同様の地位しか与えられないだろう。

9.11以降の人々の反応を見て最初に思ったのは、「なんだ、このバカ騒ぎは」である。要するに、世の中それ以上のニュースが無くなってしまっただけだ。

この認識に立つためには、近代文明の特殊性を理解しなくてはならない。

次回に続く。