【エクストリームリーディングの風景】黙々と読んでいます。プロジェクタがノートPCの後ろに見えますね。手前にホワイトボードがあります。
前回のエントリーに反響が若干あったので、エクストリームリーディングのノウハウについて書きます。とはいえ、ぼくらもまだ経験が浅いので、これにこだわらずいろんな方法を試してみてください。そしてフィードバックがもらえるとうれしいです。
【本の選定】
・よい本であることが間違いないと事前に分かっているほうがよいです。
・哲学的、数学的な難易度が高いなど、ひとりで読み進むにはつらい本が適しています。
・いわゆる古典と呼ばれる本が適していることが多いですが、それに限りません。
【プラクティス】
・事前準備なしでその場で読む
・いつでも質問
・ジョイントアテンション
・まとめドリブン
・意義の確認
・適度な休憩
・時間管理
【アンチプラクティス】
・逐語訳をする
・音読する
・準備をする
【やり方】
・日本語だと5ページ単位、英語なら2ページ単位くらいを全員が黙々と読みます。単位が節ごとなど、本の著者が設定した単位であるほうが好ましいです。読み始める前に、ここまで読みましょうと合意をとります。
・読んでいる途中に分からないことがあったらいつでも互いに聞いて構いません。
・読み終わった人は、「終わった」と宣言します。早く読み終わった人は、次を読んだり、自分なりに内容をまとめたりしておきます。
・読み終わったら、内容を誰かがまとめます。まとめるときにはホワイトボードとプロジェクターを用います。ホワイトボードにプロジェクターで投影するとよいでしょう。
・議論が長めになる傾向があるので、ほどほどで打ち切るようにしましょう。時間管理が必要です。
・発展的な議論を行うというよりは、本の内容を正確に理解しようという形の議論になります。
・以上のように、読み→議論を繰り返すことになります。
【読み方】
・普通に読みます。
【議論の仕方】
・重要な文の切り出し
各人が重要だと思う文を切り出して、その意義を議論する。
・言葉の定義
キータームがあるとそれを言葉で明確に定義する。定義されている用語を切り出す。
キータームとタームの関係をはっきりさせる。たとえば、対立概念とか、論理的な関係や因果関係など。
・まとめ
各節ごとの趣旨をまとめる。
前後関係や本全体の趣旨に対する位置づけをまとめる。
【コツ】
・人数は3人~6人くらいまで。多すぎると収拾がつかなくなると思います。
・やりたい人だけでやる。強制は難しい。レベルは同じくらいの人がいい。(偉い人がいると、異論をはさみにくくなる)
・司会者役が大事。
・短期集中。内容を忘れないうちに読み進む。
・休憩は2時間おきくらいに入れるとよいでしょう。
【例】以下が実際にプロジェクタに投影したまとめの例です。Varela "Principles of Biological Autonomy"
第1章
既存の生物学は、多様性を進化学と遺伝学で説明しようとした。
生物学では、物理化学的説明と進化学的説明で行おうとした。
問題提起:Autopoiesis:われわれがそれを生きていると性格づけることを可能にするような、すべての生命システムに共通しているものとは何か。
Varelaは、Autonomyを機械論で説明しようとし、生気論を拒否する。その哲学はサイバネティクスと同様であるといっている。
説明はいつも現象の再編成である。→構成主義?
第2章
2.1有機構成と構造の二元性
有機構成-----------構造
非質料-------------質料
サイバネティクス---物理
2.2autopoiesis機械
機械は有機構成でも(当然構造でも)ありうる。(Turing machineなど)
機械にはautopoiesis機械とallopoiesis機械がある。
autopoiesisはホメオスタシスの拡大である。
autopoiesisの定義:オートポイエーシスは、構成素が構成素を産出するという産出のプロセスがひとつのネットワークをなしたものとして組織化されているシステムであり、(1)各構成素は、互いの相互作用と変換を通じて、構成素を産出するプロセスのネットワークを不断に再産出し続け、ネットワークを実現している。(2)各構成素は、機械を具体的単位体として空間内に構成する。そうして各構成素は、単位体が産出プロセスのネットワークとして実現される位相的領域を指定することによって、この空間内に存在する。
autopoiesisの帰結
1.自律性
2.個体性
3.境界の自己決定
4.入力も出力もない
autopoiesisと自律性の関係:autopoiesisは自律性を実現するためのひとつの方法。
2.3生命システム
あるシステムが生命システムであること=(必要十分)=そのシステムが物理空間内のオートポイエーシスであること