ラマチャンドランを読むと元気になる。
なんで元気になるか考えてみた。
第一に、ラマチャンドランには「科学するこころ」がある。それはファラデーやファインマンやスティーブン・J・グールドにあるのと同じ「こころ」である。
第二に、人間のどうしようもなさを神経系の問題として取り扱う視点が、日々、とかく生きにくいこの世の人間関係のストレスを癒してくれる。
「ま、神経系がそう発火してるんだから、やつがそうするのもしょうがないさ」
という気分になれるのだ。
研究室のソファの上に「脳の中の幽霊 ふたたび」が置いてあったので、一気に読んだ。原題は"The Emerging Mind"の講演録で、日本語向けに前作の続きのようなタイトルをつけているだけだ。
かといって、まったく新しい話がないのかというとそうでもない。リゾラッティのミラー・ニューロンの話からニコラス・ハンフリーを始祖とするマキャベリ知能仮説へと展開する意識の起源論もはいっている。
この本では、ラマチャンドランが主催した1979年の会議でニコラス・ハンフリーが社会的知能仮説をはじめて発表したという紹介のされ方がされているが、ハンフリーの「知の社会的機能」"The social function of intellect"は1976年の発表である。
また、まるまる一章が脳と芸術についてのラマチャンドランの自説紹介となっているし、近年の認知哲学についての言及も多い。デネットとはお友達のようだ。
はじめて読んでも面白いだろうが、「脳の中の幽霊」のほうが緻密な謎解きのプロセスが詳細に書いてあってわくわくするので、こちらもぜひ。
元気がなくなったら、ラマチャンドランを読もう。