詩人レベッカ

SFCでの講演が終わったあとに、オリバー・サックスの名著「妻を帽子と間違えた男」に収録されている「詩人レベッカ」をぺらぺらとめくって読んだ。

「彼女は物語に飢え、物語を必要としていた。物語は必要な栄養であり、現実を知らせてくれるものだった。自然は美しいが寡黙である。それでは不十分だった。彼女が必要としていたのは、ことばによるイメージで表現される世界だった。日常の生活では簡単な説明や教えさえ理解できないのに、深遠な意味をもつ詩の中の比喩や象徴を理解することには、ほとんど困難を感じないようだった。」

これを一章まるまる朗読したほうが、いろいろ話すよかったかもしれないと思ったら、映画「マン・オン・ザ・ムーン」で、ジム・キャリーが演じる伝説のコメディアン、アンディ・カフマンが大学に呼ばれ、期待されるコメディをせずに、学生のブーイングの中、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」を延々と一冊まるまる朗読するシーンが想起され、悲しい気持ちになった。