エクストリームミーティング:究極のグループウェアはここから始まる

「究極のグループウェアに求めるもの」というエントリーを書いたのは、PICSY blogをかきはじめたばかりの2003年11月26日だった。

そこで書かれた会議運営をフォーマット化してしまうソフトウェアのプロトタイプ実装「Galapagos」が、2月26日(土)に未踏ソフトウェア創造事業の石田・長尾PM最終報告会@神保町の学術総合センターで、発表される。ちなみに、もうひとつの見所は、Namazu開発者の高林さんによる「世界規模のソースコード検索エンジンGonzui」の発表だ。

興味がある人は、誰でも参加できるので、金子さんまで連絡されたい。

こういうソフトがほしいという必要性を感じたのは、会社勤めをしていたころの経験だ。マネジメントしている開発チームの会議を主催したときに、その場で決定したことやTODOを当時あまりの忙しさに後から管理できなくなったり、取引先との打ち合わせで、膨大な会議時間とともに、決定したはずのことが終盤でぶりかえすのにたえられなかったからだ。

イデアを支持して絶対にやるべきだと言ったのは、Zopeの桜井さんとsemblogの大向さん、ツール実装とプラクティスを分けたほうがいいと提案したのは桜井さんで、それにエクストリームミーティングというナイスな名前をつけたのは大向さんだった(らしい)。ちなみにGalapagosは中嶋さんの命名。

エクストリームミーティング(eXtreme Meeting:XM)は、会議中に参加者全員で議事録を書き、終了時には完璧な議事録が完成しているということを実現する議事録ドリブンといわれるプラクティスを中心に構成されている。これにより、会議は、その目的の独立性を失い、プロジェクトを実行するための共同作業の一部へと変質する。

現在、プラクティス集自体が策定中だが、イメージをつかんでもらうために仮プラクティスを紹介しよう。

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マスタープラクティス

会議の議事録ドリブン

議事録を会議中に書いてしまい、会議の終了時点には自然と議事録が完成されているという状態にする。そのため、議事録の作成を中心として会議自体を運営し、終了時には全員で議事録の内容を確認する。「会議=アウトプットとして議事録を作る作業」と定義してしまい、議事録がつくられない会議は何もアウトプットがなかったものとみなす。

プロジェクトの議事録ドリブン

プロジェクトの運営を議事録のライフサイクルを中心としてまわしてしまう。議事録のライフサイクルとは、議事録が事前に準備され、その議事録がアナウンスされ、会議がはじまり、会議が終了し、議事録が送付され、その最終議事録に基づき、次の会議の議事録を事前に準備するといった全体のプロセスを意味する。

会議体とプロジェクトの同一視

以上の2つの議事録ドリブンによって、議事録のライフサイクルの中に、プロジェクト中のあらゆる意思決定や判断、意見などが集約される。

会議レベルプラクティス

意味の明確化

議事録中のテキストの意味を結論、意見、雑談、ToDoなど明確化して、誤解がないようにする。

ジョイントアテンション(共同注意)

プロジェクタに議事録を写すなどで注意を共有する。テーブルに向かいあうのでなく、半円系のテーブルを用いたり同じ方向(議事録が東映されている方向)を向くようにする。目と目を見つめあうアイコンタクトは相手の心を読む認知状況を参加者に喚起させ、政治的な雰囲気が生まれやすいのでそれを防ぐ。

時間管理

会議全体の時間、トピックごとの時間・優先順位をあらかじめ明確にし、その時間を越えないように運営する。

アイスブレイキング

互いの緊張をほぐす道具を用意したり工夫をする。

必要なときに必要なだけ

会議には必要なときに必要なだけ参加すればよい

終了時確認

会議が終わったら結論やToDoを確認し、次回の会議日程も決めてしまう。

プロジェクトレベルプラクティス

ラフコンセンサス&エグゼキューティングタスク

会議によってラフなコンセンサス(結論)をだし、それをもとにタスク(ToDo)を実行する。実行したタスクの結果を会議にフィードバックして、次の結論、タスク(ToDo)を決める。状況は常に変化するので、議事録に書かれた「結論」は「完全な決定」ではないが、後から常時参照する。

ラッキング

ToDoやTopicなどひとつの会議を超えるのものをちゃんとトラッキングして、次の会議に引き継ぐ。

共同所有

タスクは個人のものではなくてプロジェクトのものと考える。また、用語の定義をしっかりと記述し、プロジェクトメンバーの中で共有できるようにする。プロジェクトの課題も共有する

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未踏ソフト採択後、オンラインゲーム界のゴダールことコミュニティエンジン中嶋さんを筆頭に、最近YAHOO!にはいったばかりの寺岡さん、Java XML界の権威アプレッソ小野さん、鬼のように仕事が速いシンプル奥野さんというドリームチームが結成され、アプリケーション実装のGalapagosの開発が進められた。今回はその成果発表会である。

Galapagosでは、XMを支援するためのあらゆる機能や自動化がプロトタイプ実装されており、これから自分たちで試してみる予定だ。

Galapagosの内部で使われているXMLはXMML(eXtreme Meeting Markup Language)と呼ばれている。XMのXMLはXMMLというまことにややこしい話だが、こいつは、ドキュメントのXMLがブレイクするきっかけになればと思う。

われわれは、XMというプラクティスとGalapagosという実装を分けることによって、XMという手法の元に多様な実装系がでてくることを期待しており、XMの普及・啓蒙活動を行うコンソーシアムをつくっていきたいと考えている。