せっかくのクリスマスだったので、ファラデーが1860年の英国王立研究所で行ったクリスマスレクチャーを本にした「ろうそくの科学」を図書館で借りてきて読んだ。
たしかに、名講演というだけあって、物理化学の考え方の基礎がふんだんに含まれている。ろうそくからよくこれだけ議論するものだ。立て続けにすごい数の実験をこなしていく。単位時間あたりの実験数を数えたくなるくらいだ。これだけ準備するのは大変だったに違いない。
ぼく的には、炎がなぜ光るのかをはじめて知った。それから炎の形の理由も。
ただ、文字ではやっぱり伝わりにくいものがある。炎の色について説明してもらうよりも、炎を見たほうがはやいところもあるだろう。ぜひ、NHKあたりに当時の情景も含めてフルの再現番組を作って欲しいものだ。
「ろうそくの科学」(The chemical history of a candle)は、山形さんが翻訳されているので、本でなくてもよいという方はそちらでどうぞ。
本の最後に、ファラデーの簡単な伝記が書いてある。これがなかなか泣かせる話なのだが、その中にぼくが大学時代に聞いたことのある有名な逸話があった。
ある日、ファラデーが一心不乱に電池をいじっていたときに、ある貴婦人が訊ねた。
「そんな役にもたたないつまらないことをして何になるんですか?」
ファラデーはこう答えたという。
「生まれたばかりの赤ん坊が何の役にたつというのですか?」
あとは、歴史が証明したとおり。ファラデーの研究は、マクスウェル方程式につながり、単に電気で生活が便利になった以上にわれわれの生活に影響を与えている。
その後、池上さんに、「池上さんの研究は何年後に役に立つと思いますか」と聞いたことがある。「50億年後。」
ぼくなんかはすぐ、社会の役に立つかどうか考えてしまうけど、科学や学問にはそういうのとは無縁のところで行われるものがあってよいと思う。そして確かに、大きく世界を変えた研究には、そういうもののほうが多いような気がする。