昨日、IPAで今年度の未踏採択者に対して15分ほどプレゼンをした。先日softdrinkで使ったニューパワポの一部を使いまわして、「線への反旗」から話をはじめたら、ものすごい受けがよく、レセプションではたくさんの人に声をかけてもらった。一般の人に通用するか分からないけど、少なくとも未踏レベル以上では効果的なことがわかった。
そのレセプションでの会話をいくつか。
「セマンティックWEBを用いて自然言語からプログラムを自動生成するソフトウェアの開発」という開発テーマの人がいて話をした。
「へえ、すごい未踏ですね」
「いままでのようなプログラミング言語でソフトウェアを書く時代は終わると思うんです。」
いい読みだ。
自然言語の世界は、知の巨人がつぎつぎと挑んでは弾き飛ばされている、あたかも二○三高地のような状況だ。
「どうしようか全く決まっていないんですよね。」
「プログラミングの設定ファイル化っていう流れがあって、XML設定ファイルからできるだけアプリケーションを自動生成するようなトレンドがあるよね。」
「あ。それは分かります。」
「自然言語からXML設定ファイルを生成できれば、アプリケーションの自動生成が可能だから、まずアプリケーションのドメインを定義して、設定ファイルによってこれだけ拡張性ができるんですというXMLスキーマを考え、最後に入力インターフェイスを考えればいいんじゃないかな。それならオントロジーも定義できるでしょ。自然言語から出発して、XMLスキーマ考えて、最後にアプリケーションだと絶対失敗するよ。まず、個人ごとに高いカスタマイズが要求されるアプリケーションドメインを探すんだね。」
「なるほどー。すごい勉強になりました。ありがとうございます♪」
うーん。
次の人は、「幼児がバーチャル砂場で遊ぶ」という開発テーマだった。
「へー。砂場なんだ。物理計算とかどうやってるの? よく砂山モデルとか粉体とかあるけど、ああいう感じ?」
「ああいう感じです」
「マルチユーザなの?」
「シングルです。」
「ところで、幼児がバーチャル砂場で遊んで何が楽しいの? 本物の砂場で遊べばいいじゃん。」
「へ?」
「いや。宮崎駿問題って知ってる?」
「しらないです」
「宮崎駿っているじゃん。彼は、子供たちは元気に野山をかけめぐって遊べっていうメッセージでアニメを作ってるんだけど、彼がアニメを作れば作るほど、アニメが面白すぎて子供がテレビにかじりついてしまうという問題があって、本人も悩んでいるんだ。」
「そういう難しいことはまったく。。。」
「じゃあ、バーチャル砂場で遊ばせるメリットは?」
「雨の日にも部屋で遊べるとか。。。」
「だったら、物理法則を現実に近づけるんじゃなくて、重力をなくすとか、薄くするとか、へんな効果をいれて、普通の砂場じゃありえない環境で遊べるようにしたら面白いんじゃないの? 想像力の育成にも役立つでしょう。」
「なるほどー。すごい参考になりました。」
うーん。
ぼくは未踏コンサルがつとまりそうだな。
しかし、アイデアは誰でも出せる。とにかく実装する君たちが一番偉い! ぜひいいソフトウェアを。
さて、今日話したなかで一番面白かったのが、安斎利洋さんと中村理恵子さんのペアで、PICSYのことを高く評価してもらった。
彼らのテーマは「遺伝的ペイント」といってGAを使って無限に新しい画をつくるというプロジェクトらしい。GAをつかったメディアアートは、カール・シムズ以来かなりの作品があるから、どう面白い作品を作るのか楽しみだ。安斎さんと中村さんは、指導教官の池上さんや茂木さんのことを知っていていきなり盛り上がった。
安斎さんとPICSYの広げる系の話をいろいろと話したけど、よく分かっている人だと思った。ぼくがほぼ一方的にしゃべっているんだけど、うなずく場所とかタイミングで分かっている人とそうでない人の違いが如実にでる。チューリングテストには通っても、人間のこの感覚が再現できないと、鈴木健テストには通らない。
中村さんは、すごい発想の人で、
中村「どこ出身なんですか?」
ぼく「実家は横浜ですが、今は市ヶ谷に住んでいます」
中村「へー。横浜出身の人があんなこと(PICSYのこと)考えるんですね」
ぼく「へ?」
どうやら、PICSYは横浜っぽくないらしい。
PICSYがどう横浜っぽくないのか、聞きそびれてしまった。もう500回くらい人にPICSYの説明をしたが、発想が横浜っぽくないと言われたのは初めてだ。ぼくには、デュシャンが便器を芸術とみなしたのと同じくらいの衝撃だった。あれからずっと考えているんだけど、まだよく分からない。