お金持ちになります!宣言

なれるかどうかは別ですが。

突然何かと思うかもしれませんが、これには伏線があります。

shi3zさんのブログで、未踏はお金を儲けるのが目的でないはず、という内容のエントリーがあり、未踏内部MLを巻き込んで論争に発展しているのですが、そこでぼくの名前が例として挙げられているからです。

http://blog.livedoor.jp/shi3z/archives/27807589.html

なんでこんなことを思ったのかというと、未踏ソフトウエア事業のメーリングリストで、未踏出身者のどなたかがなにかのビジネスで成功していて(とはいっても、聞く人が聞けばごくありふれた、あーあれね、というビジネスですが)、それで株式公開したら未踏初の億万長者が出現するとかなんとか、まあそれはそれでおめでとうございますと言うしかないのですが、なんていうか、未踏ソフトウエア事業なんていう、かなり野心的な試みにおいて、結局はカネの話になるのか、と思うとなんとも情けない気分になりました。そんなにお金が欲しいんですかねえ。

普通の会社がカネを出してくれないような、真に冒険的かつ野心的な研究を行うために未踏ソフトウエア事業があるのではないのか。そうでないとしたら、単なるベンチャーキャピタルとたいしてかわらないじゃないですか。

鈴木健さんとご飯を食べるといつも

 「そもそも未踏ソフトウエア事業で採択されているプロジェクトのほとんどには未踏性が感じられない」

という話になります。

確かに、IPAXなどに行くとわかりますが、僕なんかは特に応募する前からIPAXで未踏採択プロジェクトの発表をみていて、出展者によって明らかな差があるように感じられていました。

その差ってなんだろう?違和感ってなんだろう?と考えをつきつめていくと、要するに工学的な開発計画であって科学的な発明をしようという計画ではないのだ、と思い当たるのです。

もちろん、科学の領域は大学教授の仕事だ、というご意見もたくさんあるでしょうし、そもそもまともに大学に言ってない僕がこんなことを言うのも変なのですが、要するに説明を聞いてみて、「ああ!そんなことができるのか!それは素晴らしいな」とか「そんなこと考える奴がいるのか!?」と感じることがほとんどない場合、要するに説明を受けたとたんにバットで後頭部を殴られたような衝撃を受けない場合、それって未踏性があるとは言えないのではないか、と思ってしまうのです。

まあ未踏にもいろいろありますから一概にはいえませんけど、ガラパゴス(会議効率化システム)やPICSY(価値伝播貨幣)、STN(社会信用ネットワーク)には確かに明らかな未踏性を感じました。これは別に鈴木健さんの一派を擁護するわけでもないのですが、確かにそうした発明の数々とそのほかの展示を見比べると、明らかに見劣りを感じるのです。

言いたいことは三点あります。

1.PICSYはともかく、STNとXM/Galapagosは金儲けが目的のひとつです。

(人間の行為において目的は常に複数あります)

成功すれば、ぼくもお金持ちになるはずですし、そのために着々と準備をしています。お金の使い方を知っていれば、お金を持つことは悪いことじゃありません。ぼくはお金の使い方を知っていると思っているので、お金持ちになろうと考えています。

たとえば、ビル・ゲイツくらいお金があれば、まず、荒川修作宮崎駿養老孟司に1000億円くらい使って町をつくってもらいたいです。こいつは完全に社会実験ですが、やるだけの価値はあります。

宇宙旅行は二千万円~二十億円くらいかかりますが、市場が立ち上がる初期に、そういう消費活動をするということは、投資活動をする以上の価値があります。かれらの消費によってベンチャー企業の採算がよくなり、コストダウンにつながることによって庶民が宇宙旅行にいける時期が早まるからです。ぼくがお金持ちになったら、宇宙スポーツの実践、普及活動をしたいです。

2.「そもそも未踏ソフトウエア事業で採択されているプロジェクトのほとんどには未踏性が感じられない」とけんか売っているような発言ですが、確かに言ったことがあります。何が未踏かというのは宗教論争ですが、ぼく個人の基準の一番分かりやすいやつは、「世界史に与える影響」です。ときどき、「あなたのソフトウェアは世界史にどういう影響を与えますか?」という質問をすることがありますが、ほとんどろくな答えに出会ったことがありません。アラン・ケイとかは別ですが。

ひとつ補足すると、IPAは未踏性の判断のかなりの部分を個々人の主観にゆだねています。これはすばらしい決断で、大多数が反対しようとも、一人のPMの独断で採択できるという制度になっているのです。ということで、「ぼくにとっての未踏性」は、偏狭なところがあるわけですが、それを許容する考え方が未踏の制度のよいところなのです。

IPA的には、未踏はストールマンレベルのハッカービル・ゲイツレベルの経営者を育てることが目標のようです。こいつは矛盾しているようですが、多様なPMがそろっているのでいいのでしょう。

3.PICSYでさえ、はたして科学なのか。社会工学のような気もするし。ぼくの芸術の定義は「役に立たないけどすばらしいもの」ですが、科学も役に立つと、もはや工学の趣があります。コンピュータ"サイエンス"なんて基礎論以外にあるんでしょうかね。

最後になりますが、清水さんの気持ちもよく理解できます。未踏でお金持ちになってもいいとは思いますが、普通のベンチャー企業がやっているようなレベルのコンセプトの事業なら、あえて未踏でやらなくても、という気になります。ま、所詮宗教論争ですけど。